【当ブログの説明】

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2011年3月16日水曜日

014:【記録】2011/03/16 シンドローム?

まず最初に。

交通機関の運行状況もほぼ安定し、以前と変わらぬ生活リズムに近づきつつある(生活の中身はだいぶ変わったけど)ので、そろそろこの記録シリーズも終わりにしようかと思っていたんだけど、ネタになりそうなトピックスがまだ多少あるので、今日も続けようと思う。しばらくお付き合い下さい。


今日のグループ4の計画停電は朝一番の6:20から予定されていたので、いつもより30分早い5:30に起きた。

まず身支度を整え、カミさんが用意してくれた朝食を食べながらTVでニュースを見る。

昨晩22:30過ぎに発生した静岡県富士宮市を震源地とした地震の続報も気になるところだが、まずは計画停電が実施されるのかどうかと、電車の運行状況を確認したかった。

通勤に使う京浜東北線は「通常運行」となっていた。間引きもせず、10割フル稼働で動いているらしい。劇的な改善。とりあえず通勤の心配はなさそうだ。

計画停電は実施されるともされないとも確実な情報がない。

今日は寒くなるので電力消費量が増えるから実施は確実と言っているのだが、ボクら家族の住むこの地区で実施されるのかが判らない。PCで東電のホームページを見るが、確証を得られる情報は皆無。時間までヤキモキしながら待つしかない。

ウチのマンションはポンプで水を上階に汲み上げているので、停電になると水道もトイレも使えなくなることは管理会社が配布した通知で判っていた。すでに風呂桶には水を張っているので当面は問題なし。

だが、開始時刻になっても、開始時刻から30分経過しても、停電が始まる気配はなかった。そろそろ家を出なればならない時間になるので、会社へと向かう。

相変わらず朝から震災対応の仕事でバタバタとする。トリッキーな事はせず、確実で着実な方法を取らないと、現地は混乱する一方だ。

慎重に、でも迅速にあらゆる事を取り決めねばならないので、神経がいつも以上にすり減るのも仕方がない。自然とタバコの本数が増える。

午後にはまた地震があった。今度は千葉が震源地らしい。一体全体どうなってるんだ。

家の状況も気になったので、喫煙ルームで一服しつつ、携帯でメールを確認。カミさんから「結局停電はなかったけど、いまの地震は結構揺れて怖かった」とメールで報告があった。停電にしろおさまらない余震にしろ、いろいろと苛々することばかりだけど、結果的には停電ないし地震も大したことなくてよかったね、と返事を返す。

それに被せるようにまたカミさんからメール。

なんでも、ご近所の奥さんが言うには「関東は放射能汚染が怖いから、子供を連れて地方にある実家に避難する」と言ってるらしい。「良かったらあなたたちもどう?」と誘われてるという。

出た。

「ナクナルカモシレナイ症候群」の次は「ヒバクスルカモシレナイ症候群」だ。

よく出るな症候群、ここんところ。

昨晩の地震関連報道で福島第一原発で起きる数々のトラブルで周辺住民の避難のニュースが長く扱われていて、その周辺住民の人たちが気をつけなければならないことをおどろおどろしく淡々と流す画面をみつつ、Twitterで珍しく

「周囲20〜30km圏内の人たちが注意しなければならないことを、何の前置きもなしに日本全国に垂れ流すこの報道の姿勢は何なのか?」
といった真面目なpostをしたのだが、やはりあれを見た普通の人は「危ない!危険だ!」って思ってしまうんだろうな。無理もない。

昨晩カミさんにはテレビ見ながら不機嫌そうに早口で解説したのだが、改めて説明しなきゃならんのか。ふぅ〜、疲れる。

ボクは文系出身で、生理的に合いそうもない高校の先生と出会って以来、物理が大嫌いになってしまった。だが、放射能汚染に関して調べ物をするには、そんな事は言ってられない。放射線量の知識を少しでも身につけようとネットで情報を漁ってみる。

「ミリシーベルト」「マイクロシーベルト」とはどんな単位なのか、どのくらいから危険なのか?放射線量計測単位のまとめ - GIGAZINE

こんな記事を読んでみたんだが、前半部分は役に立つものの、後半で出てくる「仕事量」だとか「ジュール」だとかはやはり物理っぽくて解りづらい。書いた人には申し訳ないけど。

「シーベルト」の意味を知っていますか?--Newton、記事を無料公開 - CNET Japan

これは非常にわかりやすく解説してあっていい感じだった。3年前くらいの記事だってさ。無料で公開。やるなNewton。

他にも、ニュース記事などで実際に昨日都内や埼玉で計測された数値を拾い集める。これらを使って説明するしかない。


まずは単位の話から。

報道ではマイクロシーベルトミリシーベルトが併用して使われているが、この関係性を理解しないといけないとGIGAZINEにも書いてあった。

話は単純で「1ミリシーベルト=1,000マイクロシーベルト」ということ。TVなどではあまり注釈がつかないものの、使われている数値はすべて1時間当たりに浴びる量を示しているらしい。

福島第一原発で最初の爆発が起きた際に計測された数値が「400マイクロシーベルト/時間=0.4ミリシーベルト/時間」っていうことになる。

とかく数値が大きいと誤解を招く恐れがあるから困る。

会社でも、1,000,000円というとすごい大金のように見えるが、これって1百万円と表現したりするでしょ。書類のスペースの問題もあるけど、こうすると大した数字じゃないように見えてこない?

だから、ここでの単位はすべて大きいほうの「ミリシーベルト/時間」に統一することとしたい。表記も「ミリシーベルト/時間」では長ったらしいので、「mSv/h」と表記する。

次に普通に生活していて浴びる放射線の量。

世界の平均値として「2.4ミリシーベルト」という数値があちらこちらに出てくるが、これは1年間に浴びる放射線の量。つまり「2.4ミリシーベルト/年」。これを解りやすくするためには時間に直してあげなければいけないので、365日で割って、更に24時間で割る必要がある。

答えは「0.0002739mSv/h」ということになる。これを(A)としよう。

先に出した数値である福島第一原発で最初の爆発が起きた際に、原発のかなり近くで計測された数値である「0.4mSv/h」は通常の1,460倍に相当するから、確かに問題のある数値だと思う。ただし、これは原発のごく近くで検出された数値で、一般の民間人にはほぼ関係のない数値だから参考にはならない。

そこで、昨日埼玉県で検出されたという数値を用いることにする。

とある記事によれば「さいたま市では3月15日午前11時に、通常のおよそ40倍にあたる1.2マイクロシーベルトの放射線量が検出されました。」とある。この「通常の40倍」という表現も厄介だが、これは後で。ここでは「1.2マイクロシーベルト」をここでの単位に戻して「0.0012mSv/h」と表記してみる。これを(B)とする。

(A)が普段の数値とすると、(B)は(A)の約4.38倍ということになる(0.0012÷0.0002739=4.38116101)。

まぁ普通の数値(A)よりは多いことになるかな。40倍と4.38倍じゃエラく違うような気もするが、ここで比較しても仕方がないか。

X線検査で浴びる放射線量を例に出してみる。

集団健康診断の時に撮る胸部X線検査、いわゆるレントゲン検査で放出される放射線量は「0.06〜0.14mSv」らしい。

低い方の数値「0.06mSv」はレントゲン検査1回当たりに浴びる放射線量を示した日本放射線学会の雑誌に掲載された古い数値とも合致するんだけど、これって1時間当たりなのかな?

比較対象になるのかわからんけど、単純比較すると(A)の約219倍もある。(B)と比較すると50倍か。

バリウム飲んで検査する胃のX線検査は「3.3mSv」で(A)の約12,048倍。(B)と比較しても2,750倍。

CTスキャンは「6.9mSv」で(A)の約25,191倍。(B)でも5,750倍もある。

レントゲンは一瞬だし、バリウムも長くて1分程度(食道から胃に流れるバリウムを撮像しているんだから一瞬じゃないよね?)だから、外を出歩いている時に浴びる放射線量と比較しても意味がないのかもしれないけど、数値だけみると検査の時に浴びる放射線量って意外と多いんだなぁって気になる。

官房長官も会見で話していた、東京−ニューヨークを往復した時に浴びる放射線量は「200マイクロシーベルト」は「0.2mSv」。(A)と比較すると、約730倍にもなる。(B)と比較しても約166.7倍。

しかもレントゲンやバリウム検査と違って、結構長い時間飛行機に乗ってるから、結構な量の放射線浴びてるんじゃないかって気にならない?全行程の総量だとしても、10時間飛行機に乗っているとして10分の1。それでも(A)の73倍だし、(B)の16.67倍もある。

関東近郊に住むと放射能汚染が怖いから地方に疎開するっていうよりも、だったら海外旅行辞めた方がいいんじゃない?

地方に移動するのに飛行機使ったら元も子もないんじゃない?

ん?どうなん?


ね、気づいたでしょ。ようは言い方なのよ。

数値の表記の仕方によって、大きく印象が異なるんだ。単位を大きいものに合わせるとすべて小数点以下の話になるから大した数値に見えなくなる。

「通常の40倍」って報道があったけど、レントゲンなんてそれ以上だし他の検査なんかヒドい数値だと10,000倍以上って表現になる。飛行機乗ったら大きい方で730倍ってんだから、大変なことやってるんだって印象持つでしょ?

持たない?いや、持つでしょ〜。

ボクは専門家でもないし物理嫌いだし、ここでの数値的な意味の検証なんかしてないから何の証明にもなってないかもしれない。

実際に数値書いていて思ったんだけど、レントゲン撮影は一瞬だし、胃のバリウム検査だってそんなに長くない。ニューヨーク往復だって全行程で浴びる量かもしれないし、毎時の数値かもしれない。

だからこの場で表記した50倍とか25,191倍なんて数値にも何の意味がないのかもしれない。だから何の証明にもなっていない。

そういう意味じゃ、テレビや新聞で報道している「◯◯倍」って数値だって、本当に比較する双方が同じレベルのもので計算した値なのかってことがわからなくなる。そもそも信ぴょう性がどれほどあるのかも疑わしくなる。

でも、『表現の仕方によって人が受ける印象が大きく異なる』ってことは証明してみせたんじゃないかな?って思うんだけど、どうでしょう?

結論として言えることは、主にTVや三流の夕刊で流布されていることは、やはり数字のマジックなんだ、ということ。

小学校の時に友達にあだ名つけた悪口言ったりすると「言われた相手がどう思うか、考えてから口に出しましょうね」なんて怒られなかった?

だから視聴者がどう受け止めるか考えてテレビカメラの前でしゃべってほしいんだよね。プロなんだから。

一般の人達の不安感を募らせて何か楽しいことでもあるんだろうか……。

おっと、いかんいかん。別にマスコミ批判をしたくてこんなことやってるんじゃなかった。これをカミさんに説明しなけれ……

あれ?もう寝てるのか。

まぁいいや。

(おわり)

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